うしずぼ日記

ひゅ~ん

(注)この記事は長い。

くしゅ🤙

遠い未来、「伝説」と呼ばれるようになる男、杉崎真宏です。

四国出張。ビジネスホテルで一泊。蒸れたスーツを脱ぎ、全裸になった俺は、バルコニーでタバコを4本束吸いしていた。

束吸いてあんた(笑)

コンコン、とノック。

「どうぞ」と俺。

ドアの向こうから女のホテルマンが入ってきた。明らかに年下でポニーテールの似合う女だ。

「杉崎様、入浴のお時間です。」

「そうか…」

俺はゆっくりその女に近づき、彼女のスーツの襟元を持った。

彼女は顔を赤らめ、俺は鼻息が荒くなる。

そして俺は彼女に背負い投げを決めた。

一瞬にして部屋は血で赤く染まった。

「ごめんよ。」

部屋を出て、大浴場に向かった。

体を洗って、湯に浸かったあと、俺はサウナ室に入った。サウナ室には1人の老父が座っていた。その老父の体には無数の傷跡があった。なるべく目を合わせないように離れて座った。

 

「坊主、ラジオパーソナリティやってるのか」

「え?」

 

その老父とは面識はない。なのになぜ、俺がレディオパーソナリティであることを知っている。俺のファンか?こいつは何者だ?

 

変な人だったら気味が悪いし、ファンだとしたらあまりサービスするのはよくないかなと思ったから俺は黙ってサウナ室から出ようとした。

出口の扉に触れた瞬間、俺の体に強力な電流が走った。

 

「ここからは出られないよ坊主。結界を張ったからね。」

 

老父は続けた。

 

「最高のラジオパーソナリティを目指してるんだろ。ここから出る方法を教えてやる。俺をトークで笑わせることだ。」

「ぬっ…」

 

俺は冷や汗をかいた。と思ったら普通にサウナで出た汗だった。

この老父を笑わせなければ、俺は暑くて死ぬ!

 

俺はとっておきのギャグをかました。

 

「ばっびゅ〜ん。」

 

老父は真顔だった。

 

終わった…。俺の中で一番面白いギャグがウケなかった…

 

「…っつすすすすすす…ッギャハハハハ!!」

 

と思いきや老父は大爆笑していた。

ドアを開けてくれた。

 

汗でヌルヌルになった俺の体は水風呂に向かう。

 

ざぶーん。

 

くぅうううう〜!!ちべたい〜!!

 

すると、水面がブクブクと泡を立てた。

なんだこれ!

俺と同い年くらいの青年が顔を出した。

「やあ。」

 

俺はとっさに、

「おう」

とだけ応えた。

 

またもや水面がブクブクと音を立てた。

今度はなんだ?!と思ったら、

 

いや俺のおならやないかい〜☝️🤣

 

ふぅ。最後は椅子に座って扇風機の風にあたろうか。水風呂から出た。

 

突然のことだった。

 

俺の四肢がもげた。

 

俺は叫んだ。

 

「突然だぁー!!俺の四肢がもげたぁー!!」

 

大浴場は瞬く間に血の海と化した。

 

視界が真っ白になり、呼吸が不安定になった。

目の前にはなぜか、さっきの青年が立っていた…

 

「私はあなたにお礼がしたい。」

誰かの声。

 

「誰だ?!」と俺。

実際には声が出ていない。

おそらくここはあの世だ。

 

奥から1人の女性が近づいてくる。

 

「あの時私を殺してくれてありがとうございました。苦しい人生でしたが、あなたは愛を持って私を救ってくれましたね。」

 

俺が部屋で背負い投げを決めた女だった。

 

「お詫びに、私のトトをあげます。僅かですが、きっとお役に立つでしょう」

 

トト、とは一体なんだろう。

彼女はトトらしき物を俺に向けた。

トトらしき物は発光している。

 

ふと目が覚めた。ここは大浴場。もげたはずの手足が元に戻っている。おそらく、トトのお陰で蘇ることができたのだろう。

 

トトが俺の体に乗ったから、復活を遂げることができた。

 

トトが乗った…トト乗った…ととのった…

 

俺は悟った。これが、「整った」状態なのか!

 

「な、なぜだ。お前の体はグチャグチャにしたはずだ!?」と青年が慌てふためく。

「残念だったな。ここからが本番だ!」

「ぬあああ?!」

「整った俺は!誰にも!止められなぁ〜い!」

 

俺が拳を突き出すと、四国は破滅した。

 

人は何故サウナに入るのか。

 

それは強くなるためだ。

 

世はまさに、サウナ戦争期。

サウナで整ったものが強大な力をその身に宿し、世界を統制するのだ…

 

「これは契約ですよ?杉崎さん。」

「分かってる。俺が死んだら、あんたも消滅するんだろう?」

「よく理解されていますね」

「こうなっちまったら仕方ねぇ。最後まで足掻くだけだ。生きるために。」

「…」

「なんだ?」

「いや、かっこよくて…」

「なんだよそれw」

「すいません…」

「…なんだかすごく幸せな時間だ。パーティでもしたいな。」

「幸せな時間…ですか。」

「そうそう、ハッピーアワーだよ。ハッピーアワーにパーティがしたい。ハッピーアワーパーティ。」

「ふふ。なんですかそれ」

「俺にもわかんない!レディオを番組名にしようかな!なーんてな!」

「ふふふふふふ」

「はははははは!」

 

あの世とこの世を繋ぐ広大な野原で男女は笑った。

 

ー20××年〇月〇日ー

 

「ハッピィ!ワンワン!ラジオをレディオと呼ぶ男、杉崎真宏ですっ…!

 

はい今日はサウナの日ということで、前回『こんなサウナは嫌だ』というお題を出したんですが、早速リスナーさんの回答拝見しましょう!

 

レディオネーム、さしすせソース焼きそばさん!こんなサウナは嫌だ、どんなサウナ!

整いすぎて皆んな三万円のネックレスに目が眩む。ギャハハ!

この回答僕好きですねぇ〜。ぬははは。三万円っていうのがねぇ、もうねぇ、たまらんねん!!

 

はい続いてレディオネーム、背負い投げホテルさんからです…。背負い投げホテル…?

 

…はいっ。えーっと…

 

こんなサウナは嫌だ、どんなサウナ。

 

サウナ室で、一度入ると結界によって出られなくなる…

 

…うぅ…ごめん、ちょっと…ごめん…音楽掛けて…」

 

(スーギタコイハノンスタルジー…)

 

俺は大粒の涙をボロボロと流した。

 

ヒョロガリのスタッフが駆けつけ

「杉崎さん!どういうことですか!」と大声。

 

「すまない…音楽終わったら、喋りたいことがある…。」

「え?」

「大丈夫だ。俺に任せろ。俺は、杉崎真宏だ。」

「は、はぁ…」

 

(イエスタデーイイズゴーン…)

来生たかおで、ほんのノンスタルジーでした。

 

さあ、改めまして杉崎真宏です…。

 

ハッピーアワーパーティが始まる前、俺の心には、パートナーがいたんだ。

俺に力をくれた、最高のパートナー。

 

でも、彼女、ハッピーアワーパーリーが始まってから、出てこなくなったんだ。

俺が忙しくなるのに気遣ってくれたのかな…

 

でも、今は別の人のところで元気にやってるみたいだな。安心した。

 

そして彼女に言いたい。ありがとう。」

 

今日の放送が終わった。

 

ハッピーアワーパーティは、俺と彼女の絆を体現する言葉だ。

 

俺は誓う。

 

最高のレディオパーソナリティになる!