降臨。満を辞して。一平だ。
本気の大学お笑い活動がいよいよ始動した。
相方はいる。髪がボサボサした男。彼女持ち。田舎生まれ田舎育ち。
一対一で会話もしたのだが、非常に面白みのある男だ。まじで解散したくない。
そして長い相談の末、私牛ズボがツッコミ、彼がボケになった。2人とも納得。
2人の会話の構図がまさにそうであったからだ。
ハイスクール漫才のときなんかよりもスムーズに会話が進んでいく。
「「「俺!漫才してるやで!!」」」
ただ、相方曰く。
「俺、ネタ書けないわ。お前頼んだで。俺はこれからラーメンすすりに行くんや。ちゃう、カレーや。カレーすするんや。」
そうして、彼はテラスを去った。
ネタ…ネタネタネタネタ…
俺は電車でネタを書き、消して、書き、消してを繰り返していた。
俺は天才なんや…俺は、俺は天才なんや…
悍ましい表情で俺はスマホに向き合っていた。
歯をギシギシと鳴らし、音が車内に響き渡る。
「ねえ、タクヤ、あの子…」
「おい、あんま見んなよ…」
「先輩…あっちの方、やばくないですか、」
「え…うわ…なんだよあいつ…」
「なんだよ、この音…どっから…」
「あのチビからだ…おいおいおいおい」
俺は、天才なんや…
天才…天才じゃねえよ。俺は天才じゃない。天才じゃないからあの時勝てなかったんだ。天才じゃなかったから俺は滑ったんだ、負けたんだ。
ネタを書き終わった。めちゃくちゃな出来になった。
「見せもんじゃねえ!!!!!」
俺は叫んだ。車内が一気に静まる。
「俺は天才じゃねえから!!笑かすなんて出来ねえよ!!!!」
周りは、「は?」みたいな表情だった。
だが、車両の奥の方から、
「頑張れ…」
と微かに聞こえた。
それが伝染していくように「頑張れ」「頑張って」「頑張れよ」「頑張れ〜」…
そして乗客全員が
「「「頑張れ!!!」」」
プシュー
駅に到着した。
電車の戸が開き、俺は胸を張って降りた。
後ろを振り返って、乗客全員にこう言った。
「いってきます。」
プシュー
俺は地球や!!!